メタボリックシンドロームでお悩みの方への食事改善

キーワード:栄養学,メタボリックシンドローム,食事改善

 これらの症状(メタボリックシンドローム/高血圧症/肝機能障害/腎臓病/痛風高尿酸血症)でお悩みの方への食事改善について,全5回に分けてお伝えします。

 第1回目は「メタボリックシンドロームでお悩みの方への食事改善」についてです。

ポイントは減量……つまり,エネルギー摂取量を減らすことです!

〈食べ過ぎないためのひと工夫〉

  1. 丼物より定食を!バランスよく食べましょう
    【肥満症,脂質異常症,糖尿病を防ぐ】
     牛丼やかつ丼,天丼などの丼物,ラーメンなどの麺類は,一品で手軽に食べられるというメリットがある一方で,炭水化物と塩分が多く,栄養バランスが偏りがちになるというデメリットがあります。栄養バランスの偏りを防ぐためには,主食,主菜,副菜などが揃った定食を選ぶことがベターです。
     しかし,丼物や麺類などに頼る機会は多いと思います。その際には,大盛や特盛などを控え,並盛(又は,小盛)を選びましょう。さらに,できるだけ具の種類が多いものを選んだり,野菜が入った小鉢やサラダを一緒につけたりしましょう(小鉢やサラダがない場合は,野菜ジュースの適宜代用も⭕️しかし,野菜ジュースだけに頼るのはNG
  2. 夕食が遅くなる場合は間食を利用しましょう

    【肥満症を防ぐ】 
     帰宅時間が遅くなる等の理由で,昼食から夕食までの間が長く空いてしまう場合,空腹による夕食の食べ過ぎが考えられます。そこで間食を利用しましょう。例えば,帰宅時間が遅くなりそうな場合,夕方に勤務先でおにぎりなどの主食(炭水化物)を食べ,帰宅後に主食以外のおかず(主菜,副菜)を食べるようにしましょう。
     間食,夕食をしっかり食べてしまうとエネルギーオーバーになるので注意しましょう。
     さらに,主食以外のおかずは,就寝時間の2時間前までに食べるように心掛けましょう。万が一,就寝時間の2時間前までに食べることが難しい場合は,汁物など消化の良いものにしましょう。

  3. 味わうことを楽しんで食べましょう

    【肥満症,糖尿病,高血圧症を防ぐ】 
     定食のおかずとご飯を順繰りに食べることで,口の中でうまみが引き出されます。これを”口中調味”といいます。塩分は,唾液でほどよい濃度に調整され,薄味のおかずでも美味しく食べることができます。味わうことを楽しみ,バランスよく栄養をとりましょう。

生活習慣病のリスクを下げるためのひと工夫〉

  1. スナック菓子,揚げ物,ファーストフードを上手に減らしましょう

    【肥満症,脂質異常症を防ぐ】 
     炭水化物のエネルギー量は1gあたり4kcal脂質(油)のエネルギー量は1gあたり9kcalになります。そのためスナック菓子,揚げ物を食べる機会を減らすことは,摂取エネルギーを減らすことにつながります。まずは,スナック菓子を大袋から小袋に変更したり,揚げ物の食べる量を減らしたりしてみましょう。
     また,ファーストフードは,フライドポテトなどの揚げ物とセットで注文せず,単品+サラダなどの野菜と組み合わせましょう。

  2. 野菜や海藻類をたっぷりと摂りましょう

    脂質異常症,高血圧症,糖尿病を防ぐ】 
     野菜や海藻類,きのこなどに含まれている食物繊維は,糖質やコレステロールの吸収を緩やかにして,食後の血糖値の上昇を抑制するなど,メタボリックシンドロームの改善に有益な働きをしてくれます。
     野菜や海藻類,きのこなどを加熱したり,スープの具にしたり,たっぷり摂りましょう。

  3. アルコールは適量を守って飲みましょう

    【肥満症,高血圧症,肝機能障害を防ぐ】
      アルコールは高エネルギーですが,その他の栄養素はほとんど含まれていないため,適量を守って飲むことが大切です。

  4. 早食い,大食い防止のために噛みごたえのある食品にしましょう

    【肥満症,糖尿病を防ぐ】 
     よく噛んで食べると,少量の食事でも満腹のサインが脳に伝わりやすくなり,食欲が抑えられます。
     ご飯→麦ご飯/食パン→フランスパン/ハンバーグ→ポークソテー/マグロの刺身→イカやタコの刺身/芋の煮物→ごぼうやれんこんの煮物にする等,噛みごたえのある食品を選び,噛む回数を増やしましょう。

リスク@メタボリックシンドローム

 メタボリックシンドロームは,内臓の周りに脂肪が蓄積(内臓脂肪)されているだけではなく,高血圧,高血糖,脂質異常のうち複数のリスクがある状態です。放置すれば様々な生活習慣病の引き金となり,脳卒中や心臓病を招きやすくなります。

Q&A@メタボリックシンドローム

 Q 外食が多く,ついつい食べ過ぎてしまいます
 A 自分に必要な量以外は残す勇気も必要です

 「残すのがもったいない」と全て食べてしまうこともあると思います。基本は腹八分目を意識して,自分に必要な量を超えていると思われる場合は端をつけず,残す勇気も必要です(又は,小さいもの等を注文し,足りない場合には野菜が入った小鉢やサラダをプラスしましょう)。
 主菜は低脂肪のものを,高エネルギーな揚げ物等を食べたい場合,同じ量であれば「小さいものを複数」より「大きめのものをひとつ」にしましょう。衣は厚いものより薄いものを選びましょう(衣をはがして食べるという方法もあります)。

 Q 運動は苦手だが,どのような運動をどれくらいすればよいのでしょうか
 A 減量の為の運動は続けることが重要です

 最初はウォーキングのような有酸素運動を1回20-30分,週に2回程度から取り組んでみてはいかがでしょうか。慣れてきたら,ジョギングや水泳などを行ったり,回数や時間を増やしたりしてみましょう(ジョギングを行う際は,走るスピードを上げ過ぎず,おしゃべりができるくらいのペースで走りましょう)。
 体を動かすことを通じて,運動に興味を持ち始めたら,有酸素運動だけではなく,筋力トレーニングなど運動強度のあるものに取り組んでみても良いかもしれません(筋肉量を増やし代謝をよくしましょう)。
 運動する時間を確保することが難しい方は,日頃から体を動かすことを意識しましょう。例えば,近場に出掛ける時は歩いて行く,エスカレーターではなく階段を利用するなど,身近なところで体を動かしてみましょう(階段を利用する場合は,上りの時にしましょう)。

 

“高エネルギー,脂質過剰,塩分過剰”な「普段の(好きな)食事」から,“バランスを整え,食べ過ぎを防ぐ”「理想の食事」を心掛けましょう

引用参考文献:メタボリックシンドロームの方のためのやさしい食卓