痛風・高尿酸血症でお悩みの方への食事改善

キーワード:栄養学,痛風高尿酸血症,食事改善

 これらの症状(メタボリックシンドローム/高血圧症/肝機能障害/腎臓病/痛風高尿酸血症)でお悩みの方への食事改善について,全5回に分けてお伝えします。

 第5回目は「痛風高尿酸血症お悩みの方への食事改善」についてです。

ポイントは摂取エネルギー量と尿酸値を上げないです!

*「プリン体」が原因と思われがちですが,大きな要因は「食べ過ぎ」と「飲み過ぎ」です。まずは摂取エネルギーを抑えることが大切です。おつまみ等にも注意をして,適正飲酒を心掛けましょう。

 

〈「摂取エネルギー量を抑える」為のひと工夫〉

  1. 油を控えた調理法で上手にエネルギーダウン

     同じ食品でも,調理法によってエネルギー量は大きく変わります。「揚げる」よりも「蒸す」「茹でる」揚げる〉炒める〉煮る〉蒸す〉茹でる等の調理法を選びましょう
     調理法に変化をつけ,柑橘類や香辛料を上手に効かせると,油や塩分の過剰摂取を防ぐことにもつながります(油は風味付け程度に効果的に使いましょう)

  2. 肉類は脂肪を減らす食べ方に

     肉類は部位によってエネルギー量が異なります。一般に牛肉は「バラ→サーロイン→肩ロース→肩→モモ→ヒレの順に,豚肉は「バラ→ロース→肩ロース→肩→モモ→ヒレの順にエネルギー量が低くなります。できるだけ脂身の少ないものを選ぶようにしましょう鶏肉の場合は皮の部分に脂肪が多いので,取り除きましょう鶏もも肉よりも鶏むね肉やささみを選んでみましょう)

  3. 塩分は控えめに

     濃い味付けの料理は,主食を食べ過ぎたり,お酒を飲み過ぎたりする為,エネルギーオーバーになりがちです。麺類はつゆ(スープ)を残こす,既に味付けされている料理に調味料を足さない等を心掛けることです。
     減塩醤油等も使い過ぎれば塩分の過剰摂取を引き起こします。醤油,ドレッシング類は直接かけずに,小皿にとって軽くつけるようにしましょう。

〈「尿酸値を上昇させない」為のひと工夫〉

  1. 水分を十分に摂る

     尿酸のほとんどは尿から排泄されるので,尿量を増やすことが大切です。1日2000ml以上の尿量の確保を目的に,十分な水分の摂取をしましょう(例えば,起床時に500ml,朝食時等に250-500ml,デスクワークやその他の活動時,運動前後に500ml,入浴前後に250-500mlといったような具合に水分を摂取してみましょう)
    果汁ジュースや炭酸飲料,スポーツドリンク,アルコール等を多量に摂取することは避けましょう

  2. アルカリ性食品の野菜や海藻類は積極的に

     尿酸を多く排出する上で,酸性に傾いている尿を中性化するのにアルカリ性食品が効果的です
     アルカリ性食品は人参等の野菜,わかめ,ひじき等の海藻類,いも類,果物,大豆等です。これらは毎食摂るように心掛けましょう。かさばる野菜も加熱したり,汁物に入れたりすることで,たっぷりと摂ることができます。

  3. プリン体食品は少量を楽しむ

     尿酸のもととなるプリン体は,ほとんどの食品に含まれています。尿酸値を上げる要因はプリン体の多い食べ物の摂取のみに限りませんが,「高プリン体食品」の過剰摂取は控え,少量を楽しむ程度にしましょう(アジやサンマの干物は1尾が50-70mg程なので,食べ過ぎないように心掛けましょう)
    プリン体食品の例・・・300mg以上:鶏レバー/真イワシ干物/イサキ白子/アンコウ肝酒蒸し,200-300mg:牛レバー/豚レバー/カツオ/真イワシ/大正エビ/真アジ干物/サンマ干物

  4. 牛乳・乳製品はしっかりと

     牛乳・乳製品は,尿酸値を下げ,痛風のリスクも増加させない効果があることが分かっています。
     1日200gを目安に,牛乳・乳製品を取るようにしましょう。

  5. アルコールは適量を守って

     プリン体の含有量に関わらず,アルコール自体に尿酸値を上昇させる働きがありますアルコールは高エネルギーで食欲を増す為,食べ過ぎにつながる可能性もあります。お付き合い等でアルコールを飲む際も,適量を守ることが大切です。
    アルコールの適量(目安/1日あたり)・・・ビール中瓶1本(500ml)/日本酒1合(180ml)/ウィスキー・ブランデー ダブル(60ml)/焼酎(35度) 2/5合(約70ml)/ワイン2杯弱(200ml)

ハテナ@尿酸とプリン体の関係

 血液中の尿酸値が高くなった状態が「高尿酸血症」,さらに血液中に尿酸が溜まり続けると結晶化し,やがて痛風発作を引き起こします。尿酸は,食品中や体内の細胞の中にある「プリン体」という物質が,主に肝臓で代謝されて生じた老廃物です。

Q&A@痛風高尿酸血症

 Q 食事は高プリン体の食品を避ければ良いのでしょうか?
 A 食事の量,そのものを減らしましょう

 高プリン体食品を極力控えることは基本ですが,多かれ少なかれ,ほとんどの食品にはプリン体が含まれています。その為,プリン体が少ない食品であっても多量に食べればプリン体の摂取量は多くなってしまいます。
 プリン体の摂取量を減らすには,食事の量,そのものを減らすことが最良の方法です。特に肉はエネルギーも高めなので,普段食べている量の半分程度にしてみましょう。焼いたり炒めたりするよりも,しゃぶしゃぶにするとプリン体の他に余分な脂肪分も落ちるので,エネルギーダウンにもつながります(余分な脂身を切り落とす(取り除く)ひと手間を加えてもみましょう)。また,肉や魚を使った煮物は,プリン体や脂肪分が溶け出しているので,汁は残すように心掛けましょう。

 Q ビール以外のお酒なら飲んでもOK?
 A アルコール自体に尿酸値を上げる働きがあります

 アルコール類の中で,ビールのプリン体含有量が多めということは確かです。しかし,アルコール飲料に含まれているエタノールには,尿酸の産生を促し,排泄を抑制する作用がある為,ビール以外のアルコール飲料でも飲み過ぎれば尿酸値を上昇させることに変わりはありません。
 最近では,プリン体を減らした発泡酒が市販されていますが,アルコール度数はあまり変わらないので飲み過ぎないように注意しなければなりません。また,飲酒で問題となるのは,おつまみです。飲酒に伴って,ついつい食べ過ぎてしまうことで,摂取エネルギーが過剰になりがちになり,結果的に尿酸値を押し上げることにつながります。
 飲酒は適量のアルコールと,野菜の煮物や酢の物といった野菜たっぷりのおつまみで楽しみましょう

 

“高エネルギーで野菜が不足がちな”「普段の(好きな)食事」から,“栄養バランスを整え,水分,野菜をたっぷりと摂る”「理想の食事」を心掛けましょう

引用参考文献:痛風高尿酸血症の方のためのやさしい食卓