腎臓病でお悩みの方への食事改善

キーワード:栄養学,腎臓病,食事改善

 これらの症状(メタボリックシンドローム/高血圧症/肝機能障害/腎臓病/痛風高尿酸血症)でお悩みの方への食事改善について,全5回に分けてお伝えします。

 第4回目は「腎臓病でお悩みの方への食事改善」についてです。

ポイントは決められた量を3食に賢く配分することです!

*腎臓の機能を少しでも長く保つ為には,食事の取り方が重要です。特にタンパク質や塩分の量に配慮することが大切です。医師の指示がある場合は,量や取り方を守り,長く続けられる工夫をしていきましょう。

 

〈「タンパク質を取り過ぎない」為のひと工夫〉

  1. タンパク質は決められた量で

     タンパク質は,体を構成している細胞の重要な成分で欠かせない栄養素ですが,使われた後に老廃物が出る為,腎臓がその老廃物を取り除く役目をしています。腎臓の機能が低下すると,負担を掛けないようにタンパク質を制限する必要が出てきます。必ず医師の指示を守って食事を取りましょう。
    タンパク質制限がある場合・・・決められた量を必ず守る/良質なタンパク質の多い食品を選ぶ(肉や魚,卵,大豆製品)/適正量エネルギーを摂る/タンパク質制限が厳しい場合は治療用特殊食品を活用

  2. 無理なくタンパク質を減らす

     3食均等に減らすのが難しい場合,朝食時にタンパク質の多い食品を使わないことも1つの方法です。朝食のパターンを2-3通りに決めておくのも良いでしょう。
    朝食・・・ジャム付きトースト/グリーンサラダ/コーヒー(パンと野菜のおかずが中心)
    昼食・・・そば/天ぷら/キャベツの塩もみ
    夕食・・・牡蠣のクリームグラタン/大根。きゅうり・人参のサラダ/ご飯/パイナップルゼリー(牡蠣は帆立の貝柱や芝エビ等でも代用可能)

〈「減塩」の為のひと工夫〉

  1. 調味料は控えめにし,汁物は1日1杯までに

     高血圧やむくみ予防の為に,塩分は制限をしましょう。調理時に塩分を控える他,食卓でかけたり,つけたりする醤油やソース類も,なるべく減らします。麺類は汁(つゆ,スープ)を残し,汁物は1日1杯までにしましょう。
    減塩のポイント・・・調理時は塩分の多い調味料を控えめに/食卓で醤油やソースを使い過ぎない/麺類は汁を残す/汁物は1日1杯までにする/加工食品は控えめにする

  2. 酸味,うまみ,香りで風味豊かに

     肉や魚介,きのこ,野菜等,うまみの出る食品同士を組み合わせる,酢やレモン等の酸味を加える,香辛料や香味野菜の香りを活かす等,薄味でも風味豊かに仕上げることで,満足感も高まります。
    風味をプラスするヒント・・・酸味:酢,レモン,ゆず等を活用/うまみ:肉や魚,きのこ,野菜を組み合わせる。だしを活用する/香り:しそ,しょうが,ねぎ,にんにく,ハーブ等を活用/辛み:カレー粉,唐辛子,ゆずこしょう等を活用

  3. 物足りない時は味にメリハリを

     塩分を一律に制限してしまうと,食事が味気なくなってしまいます。そこで1食の中で,普通の味付け,薄い味付け,塩分ゼロと,献立ごとに味のメリハリをつけることも1つの方法です。

〈「カリウムを取り過ぎない」為のひと工夫〉

  1. 茹でる,流水にさらす工夫を

     血清カリウム値が高い場合,カリウム制限の指示が出ることがあります。カリウムは,肉や魚,野菜,いも類,海藻類(特に昆布の佃煮),豆類,果物(特にアボカド,バナナ),果汁や野菜100%のジュース,ドライフルーツ(干し柿,レーズン等),ピーナッツ,アーモンドに多いので,たくさん取り過ぎないようにしましょう。
     茹でる,水にさらすことで,カリウムを減らすことができます。

Q&A@腎臓病

 Q ご飯のタンパク質を気にしないで食べる方法はありますか?
 A 治療用特殊食品を上手に活用しましょう

 タンパク質制限が厳しい場合は,ご飯等の主食に治療用特殊食品を利用すると良いでしょう。
 タンパク質調整ご飯は,エネルギー量は普通のご飯と同じくらいですが,タンパク質やカリウム等の量が軽減されています。通常は,お茶碗1杯(約150g)のご飯には約4gのタンパク質が含まれているとされていますが,タンパク質調整ご飯は比較的多いものでも通常の5分の1,少ないものでは35分の1と様々なバリエーションがあります。ご飯の他,パンや麺等の治療用特殊食品もあります。

 Q タンパク質の制限で食べる量が減るのが心配です
 A エネルギーアップに適度に油や糖分を活用しましょう

 タンパク質を制限すると,どうしても全体のエネルギー量が減りやすくなります。エネルギー不足になると,かえって腎臓に負担がかかったり,体力が落ちたりすることがあるので,気を付ける必要があります。
 間食をうまく活用する他,日常の調整では「炒める」「揚げる」等,油を適度に取り入れ,エネルギーアップを図りましょう。また,砂糖やはちみつ等の甘みをドレッシングやたれ,ソース等に加える(足す)ことも工夫の1つです。

 

“タンパク質や塩分が多く,腎臓への負担が心配な”「普段の(好きな)食事」から,“1日に決められた量を守り,酸味や香りで減塩した”「理想の食事」を心掛けましょう

引用参考文献:腎臓病の方のためのやさしい食卓