肝機能障害でお悩みの方への食事改善

キーワード:栄養学,肝機能障害,食事改善

 これらの症状(メタボリックシンドローム/高血圧症/肝機能障害/腎臓病/痛風高尿酸血症)でお悩みの方への食事改善について,全5回に分けてお伝えします。

 第3回目は「肝機能障害でお悩みの方への食事改善」についてです。

ポイントは禁酒・節酒(この2つは必須です)……つまり,エネルギー量の取り過ぎを抑えることです!

*たとえアルコールを飲まなくても,暴飲暴食は肝臓に脂肪を蓄積させ,肝機能を低下させます。肝臓にやさしい食べ物や食べ方を身につけていきましょう

 

〈「脂肪肝」の方は,まずは減量〉

  1. 肉類は脂肪を減らす食べ方に

     脂肪肝は,肥満等により肝臓に中性脂肪が蓄積することにより起こります。脂身がたっぷりの肉類は高エネルギー食品の1つです。
     牛肉や豚肉は,脂身の多い霜降り肉やバラ肉よりも,赤身のヒレ肉やもも肉を選びましょう(豚のしょうが焼き等を作る際には,余分な脂身は切り落とすと良いでしょう)鶏肉の場合は皮の部分に脂肪が多いので,取り除きましょう鶏もも肉よりも鶏むね肉やささみを選んでみましょう)

  2. 調理法を変えて上手にエネルギーダウン

     同じ食品でも,調理法によってエネルギー量は大きく変わります。「揚げる」よりも「蒸す」「茹でる」揚げる〉炒める〉煮る〉蒸す〉茹でる等の調理法を選びましょう
     調理法に変化をつけ,柑橘類や香辛料を上手に効かせると,油や塩分の過剰摂取を防ぐことにもつながります(油は風味付け程度に効果的に使いましょう)

  3. 野菜や海藻類はたっぷりと

     野菜や海藻類,きのこ等に含まれる食物繊維は,糖質やコレステロールの吸収を緩やかにするとされ,生活習慣病の予防にも役立ちます。減量中もしっかり摂りたい食品の1つです。
     特に野菜は加熱したり,スープの具にしたり,たっぷり摂るようにしましょう。

  4. 禁酒・節酒

     アルコールは中性脂肪の合成を促し,脂肪肝を促進させます。既に肝障害を患っている方は肝機能が低下している為,禁酒が原則です。
     医師の許可が出た場合に限り,適量を厳守した上で,週に2回は休肝日を設けて楽しみましょう。

  5. ご飯や麺類等も取り過ぎに注意

     主食であるご飯やパン,麺類は食べ過ぎるとエネルギーとして使われず,中性脂肪に作り変えられ,肝臓に蓄えられます。
     食べ過ぎてしまうという方は,ご飯の場合は,茶碗を小さくする,ミニサイズや小盛を選ぶ等の工夫が必要です麺類の場合は,野菜等の具材を多くして,麺の量を減らすようにしましょう
     甘いお菓子も,夕食後に食べると中性脂肪に変わりやすい為,控える等,注意しましょう。

〈「アルコール性肝障害」の方は禁酒をし,3食きちんと食べる〉

  1. 3食きちんと食べる

     食事をきちんと摂らずにアルコールばかり飲んでいた方は,低栄養になっていることがあります。酷使された肝細胞の修復には,タンパク質の摂取が不可欠です。
     医師の許可が出るまでは禁酒の上,肉や魚,卵,大豆製品等のタンパク質が多い食品をとれる食事を3食きちんと食べるように心掛けましょう。

〈「慢性肝炎」の方は鉄分に注意〉

  1. 鉄分の取り過ぎにご用心

     肝臓の為には鉄分を摂った方が良いと思われがちですが,慣性肝炎(C型肝炎)の方は,肝臓に鉄分がたまると肝硬変や肝臓がんへの進行が早くなることが分かっています。その為,レバーや赤身の肉,しじみ等,鉄分の多い食品を控えましょう。

ハテナ@NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)とは?

 かつては,お酒を飲まない人の脂肪肝は,肝硬変に進むことはないと言われていました。しかし,近年,お酒を飲まなくても脂肪肝から肝硬変に進行するケースがあり,「NASH非アルコール性脂肪性肝炎)」と呼ばれています。スナック菓子や甘いものが好きな人は注意が必要です痩せ型の人にも見受けられます)。

リスク@肝機能障害(生活習慣病

 食べ過ぎ等の食生活の乱れは,内臓脂肪を増やす要因の1つとなります。それが,高血糖や高血圧,脂質異常,脂肪肝等につながり,様々な生活習慣病の発症リスクを高めます。
 そのため,できるだけ早い段階で食生活を改善していきましょう。

Q&A@肝機能障害

 Q しじみ汁って肝臓に良いんですよね?
 A しじみだけではなく,バランスよく栄養を摂りましょう

 しじみは栄養価が高く,昔から「お酒を飲んだ後にしじみ汁を飲むと良い」と言われますが,しじみが肝臓に効くという信頼できるデータは残念ながらありません。しかし,しじみには,タンパク質や肝機能を正常に保つタウリンメチオニンの他,ビタミン類が多く含まれている食品の1つです。しじみに限らず,肝臓の働きに欠かせないタンパク質を含む肉や魚,ビタミン類が多く含まれている緑黄色野菜等,様々な食品をバランスよく食べ,禁酒・節酒に努めることが大切です。
 ただし,慢性肝炎(C型肝炎)の方の場合,鉄分を多く摂ると肝硬変や肝臓がんへ進行する不安がある為,鉄分を多く含むしじみはできるだけ控えましょう。

 Q 慢性肝炎のインターフェロン治療で食欲が落ちてきたときの対処法は?
 A 食べられそうなものを少しずつ食べましょう。良質なタンパク質を摂る工夫をしましょう

 治療の副作用で食欲が落ちてしまう方がいらっしゃいます。食欲がない時でも,あっさりとしたお粥や麺類,豆腐,ヨーグルト等,喉ごしのよい食品なら摂りやすい場合が多いので,まずは,食べられるものを食べましょう。また,柑橘類等の酸味,香辛料やしょうが等の香味野菜を適度に使うと食欲を刺激してくれます。
 脂肪の少ない鶏むね肉や魚を蒸したり焼いたりすると,あっさりとして食べやすい上,タンパク質を補給することもできます。
 食事は味覚だけではなく視覚でも楽しむものです。普段使っている器から,いつもとは違う器に変えて,盛り付けを工夫してみることも良いでしょう。

インターフェロン治療:インターフェロンとは,本来私達の体の中で作られる蛋白質(タンパク質)であり,体の防御機構を活性化させることでC型肝炎ウイルスの排除を目指します。

 

“高エネルギーの上,アルコールが肝臓に負担をかける”「普段の(好きな)食事」から,“エネルギー量を減らし,まずは禁酒から始める”「理想の食事」を心掛けましょう

引用参考文献:肝機能障害の方のためのやさしい食卓,C型肝炎新しい治療,新しい可能性(http://www.c-kan.net/treatment/02.xhtml